少年の死

砂岩が無限に打ち寄せて
森は終わり
冷酷な月がはじまった
錆付いた天球にかけられた
自殺念慮の信号灯が
われわれの足跡を照らし出し
おまえの血もまた立ちどまる
どこまでも沈む
永遠の深海底
音のない砂の底



おまえはおまえの死をしんだ
目をつぶされ
耳をとざされ
声をころされて
おまえはおまえの死をしんでいた
鳴き声ひとつ上げられない
生煮えの眼球
ねじれた体節
流れ出した血は
故郷への道しるべを森に刻んだ



おまえが誰に殺されたのか
わたしにはわからない
それは
嘘と逃亡が得意な雌豹の
無遠慮な流し目であったか
あるいは
不器用なわたしの無意識が放った
流れ弾であったか
それとも
おまえ自身によるさいごの
私有のこころみであったのか
わたしにはまだ わからない



血の枯れ果てたおまえを
わたしはここに埋めていく
ただひとつ 胸に隠されていた
小さな爆弾だけをひきうけて
自殺念慮の信号灯が
おまえの青い頬を染めぬいた
暗い砂漠の波打ち際が
おまえのからだを折り曲げた



何を破壊するべきかも知らぬまま
どこまでもおまえは沈んでいくだろう
永遠の深海底
音のない砂の底