緑川愛彩(あい)「海が愛したボニー・ブランシェ」

 専門学校のOB・OG勉強会で非常にお世話になった緑川愛彩(あい)先輩が、「海が愛したボニー・ブランシェ」という作品でB’s‐LOG文庫からデビューした。という風の噂を聞いたので、八王子の書店で平積みされていたのを買ってきた。緑川先輩、おめでとうございます!


 ロラン海に面したガルトリア国には、けがれなき乙女が海を鎮めたという「ロランの乙女」の伝説がある。その「ロランの乙女」の血を引く少女ボニー・ブランシェは、自分の出自など知らないまま、生まれた町で造船業を営む両親と幸福に暮らしていた。
 だがある日、両親は何者かに殺されてしまう。犯人は、悪名高い海賊のファド・ディアスだと名乗った。身寄りをなくしたボニーは王族により修道院へ閉じ込められる。両親をうしない、慣れない修道院の生活を強制され、さらに、「伯爵」と呼ばれる鎧に身を包んだ冷徹な騎士に監視されるという境遇に陥る。
 軍船の進水式に修道女として駆り出されたボニーは、犯人のファド・ディアスらしき人影を群集の中に見つけ、儀式の最中に飛び出していく。そしてファドと対峙し、事件の真相を聞きただそうとする。だが、当のファドは、完全な濡れ衣で犯人は別にいると答える。そこへ、伯爵が騎士を従えて駆け付けて来る。
 真実を知らないまま修道院で牢獄のような生活を送ることに絶望していたボニーは、犯人ではないというファドの答えを信じ、「あたしをここからさらって!」と頼んで、一緒に逃げ出してしまう。そうして、ファド達海賊と共に、両親を殺した真犯人を探す冒険を始める――。

 そんな海賊冒険ファンタジーだった。あとがきにあるように「読んだあと気分がすかっとする話」になっていて、今の季節に読むにはぴったりだろう。B’s‐LOG文庫を読んでいる小中学生の女の子(?)が夢中になるような物語に仕上がっていると思った。

 これは書きにくいことだけれど、僕は勉強会で色々と傲慢なふるまいを重ねてしまって、今は活動から距離を置いている。(僕にはそういう出入りのできない場所がいくつかあるのだ)
 そんな立場で、今回の先輩のデビューについて思うことはあるだろうか。たとえば、悔しさとかは?
 もともと尊敬していた先輩なので、悔しさはあまりない。先輩はデビューするべきであったし、それも時間の問題だと思っていた。夢の実現へのステップを先輩がこなせた事を、素直に祝福したい。「生意気な事言って、あいつまだデビューしてないんだぜhehehe」とか言われたら悔しいが、先輩にはそれを言う資格があるのだから仕方ない。
 勉強会については、平謝りするしかあるまい。しかし、今更謝ったところで白々しいだろう。ただ今は、やるべき事をやっていこうと思っている。

 そうしてやはり、僕は自分の小説を書こうと思った。僕の頭の中にある物語のイメージは、やはり僕しか形にできないのだ。

海が愛したボニー・ブランシェ (ビーズログ文庫)

海が愛したボニー・ブランシェ (ビーズログ文庫)