帰還

 吉祥寺のライブから部屋に帰ってきたら、小惑星探査機「はやぶさ」も地球に帰ってきていた。


 決して「無事」だとは言えない七年間の旅だったようだ。当初の予定では2007年に帰還し、大気圏には突入せずに別の目標へ向かうことも考えられていたのだけれど、色々あってそれが無理になり、結局大気圏で燃え尽きる運命となったようだ。

 思えば、この「はやぶさ」が小惑星イトカワ」に着陸した当時は、ある女の子に告白して、返事を待っていた頃なのだ。「はやぶさ」の冒険についてその子に熱っぽく語っていたのを思い出す。告白は結局、「はやぶさ」の着陸ほどもうまく行かなかったのだが。

 そういった個人的に思い入れのある機体が燃え尽きたのはなんだか寂しいけれど、偉大な冒険家が地球の空に溶け込んだのだと思えば、冷たい宇宙空間を永遠に回り続けるよりも、ずっと幸福な最期なのだとも思えるのだ。


はやぶさ (探査機) - Wikipedia