リリスの下僕

 リリスについて、もっと書いてみようと思う。私はリリス的な女性に強く惹かれるところがあるのだ。
 私が好む女性は、まず邪悪であることが挙げられる。犯罪やその他の罪を犯しているという意味ではなく、自分の内側に暗い核を抱えているような人のことだ。
 次に奔放であることが挙げられる。これは常に明るく活発であるということではなく、本質的には誰の言いなりにもならない(あるいは、なれない)という事を意識しているということだ。
 最後に、孤独であることが挙げられる。これは前の二つの条件を備えていれば自然と備わってしまうものなのかもしれない。ゆったりとした潮流に流されて気付いたら孤島に打ち上げられていたような、自然な孤独さだ。
 そういった、男性的論理で量りきれないところに身を置いているミステリアスな女性が私は好きだ。そういった人は邪悪でありながら神聖・内向的でありながら活発・静的でありながら奔放という、相反する要素を兼ね備える。そして世間一般から見えるのは邪悪・内向・静的の方だったりする。
 いわゆる悪女とは違う、もっと壮大な世界に触れているような邪悪に私は惹かれる。世間一般に騒がれる悪女の悪なんて、無知や浅薄から来ている表層的なものに見えるのだ。そうではなく、たとえどんなに貞潔で知的で物静かであっても――むしろ、だからこそ――抱えてしまう邪悪を私は愛する。
 そういった邪悪さは、いわゆる小悪魔・悪魔・悪女・娼婦なんていう表現には収まらない。もっと神秘的で根源的、そして壮大なものだ。だから私はそれをリリスと呼びたい。
 アダムの妻でありながらエデンの園から逃げ出し、悪魔たちと交わった。そんな、世界とのあまりに決定的な齟齬を抱えている女性を私は愛してしまう。