墜落プログラム

粘性の闇と脂ぎった照明
鳥が落ちてくる感覚に見舞われて
俺は地面に膝を突く
ここは他人の内臓 その内側だ
岸壁に這うパイプの群に
ひどく散文的なコンクリートの起伏
腰掛けるところなどどこにもない凹凸



鳥が落ちてくる感覚は
どこからもたらされたか 狭い谷あいの
空を見上げる 俺は息を殺す
誰かが俺を見ているのだ
こんな他人の内臓 その内壁に沿って
無数の視線が降り注いでいる
はるか冥王星の彼方から そして
プランク長を割るほどの近傍から



鳥が落ちてくる感覚は
どこへ行こうというのか 狭い谷あいに
血が流れていく 俺は背を反らす
コンクリートの壁に穿たれる潰瘍
他人の内臓 プラスチックと
英数字のアドレスで象られた
もろい自我を抱えながら
俺は今まで一度も 身体なんて
持ったことがないことに
いまさら気付く



鳥が落ちてくる感覚が
何もかも明らかにしてしまう
暗号化されたバイト列を
ほどいた幽霊 俺はかつて
何かだったことはなく そういった
至高の美を体現する術はすでになく
さまよっている もう千年? 二千年?



鳥が落ちてくる感覚が
自我に穴を穿ち思考の路地を破るのだ
存在が髄液のように漏れ出ていく
電車も絶えた夜更け 他人の内蔵
いや アパートの並ぶ 線路伝いの
小道を歩く自分に気付き
ブロック塀に手を突いて 部屋を目指す
従うべき方法論と命令文の
詰め込まれた暗い小部屋を だが
鳥が落ちてくる感覚に対応する
実行計画があるとは思えない