南々井梢さん「コカンセツ!」感想

 黒赤ちゃんの元マネージャーである南々井梢さんが、ついに作家デビューを果たした。そのデビュー作「コカンセツ!」の感想。


 男子新体操部。マイナーでストイックな世界にさまよいこんでしまった男子達は、周囲からの嘲笑や不理解の前に屈折してしまう。そして、たった独りで新体操部を支えていた先輩キャプテンの遠征=不在を機に、革命を企てる。キモく不人気な男子新体操から、オシャレでカッコよい、人気のあるHIP HOP部へ!
「コカンセツ!」は、そんなひと夏のチェ・ゲバラ的革命譚である。チェ・ゲバラ的というのは嘘だが。
 読み始めてすぐ、ああこれは僕達の青春だ、と分かる。青春というか、青春(笑)というか、セーシュンというか。マンガやアニメや映画やドラマで描かれるような爽やかで甘酸っぱい青春なんて、普通あんまりないよね、少なくとも僕にはなかった。といった青春だ。
 出てくる登場人物にロクな男子がいなくて、みんな部室でゲームやっちゃうし新体操部なのに練習せずにフットサルやっちゃうし、ちょっと HIPHOPに触れてカッコいいなと思ってかぶれてみたりする。真面目でシリアスなシーンの帰り道でゲームやテレビの話をしちゃうし(笑)。
 そんな本当にどうしようもない男子達のどうしようもない夏の話で、元男子として僕はひたすら痛かった(笑)。まるでわが身の事じゃないか! 作者の南々井梢さんが実際には男子でないからこそ、ここまで痛々しくリアルに書けたのだと思う。僕ならとても筆を進められない(笑)。
 だけど、痛々しい姿を描きながらも、目線はなんだか優しい。
 どうしようもなくてフラフラしていて情けないところも、軽薄でいったりきたりで、それでもどうにか凄いもの、カッコいいものになろうと思い悩む様も、全部受け止めてくれている感じがした。
 そんなわけで、痛い男子や痛かった男子や今なお痛いままの男子、そんな男子を見てみたい女子にオススメします。


コカンセツ! (Edge)

コカンセツ! (Edge)


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