雨が止んだ日

 5/8金曜日は、休暇を貰ってオフだった。この機会に平日の用事を済ませておこうと、雨の中役所や銀行を巡り歩いた。
 用事が一通り済んでから、中央線に乗って都心を目指した。以前に紹介した村松葉子さんが、北青山のMAYA2というギャラリーの企画展示に参加するとのことで、覗きに行ってみようと思ったのだ。

「 平川彰レコード・ジャケット・デザイン展」

 八王子で電車に乗った頃はまだ雨が降っていたけれど、都心に近づくにつれて空は徐々に晴れていった。雲が切れて青い空がのぞく。湯気を立てているような雲の断面が車窓からは見渡せた。
 空の一隅、ちょうど新宿方面から、うっすらと虹が立ち上っているのに僕は気づいた。ほんの4分の1ほどしか見えなかったけれど、太く大きな虹だった。雨でなんとなく沈んでいた気分も晴れ、その辺りの子供に虹が出ているのを教えてみたくなったりした。
 電車内で、カメラも持っていなかったので、僕は写真を撮れなかったけれど、マイミクのgustaさんは一眼レフで何枚も写真を撮れたとのこと。お願いして見せていただいた。本当にはっきりと虹が出ていてびっくりする。

 gustaさんどうもありがとう!

 電車はやがて都心に着いた。青山や赤坂周辺は個人的に懐かしくて、なんとなく四谷駅で降りて歩いてしまった。青山通りを渋谷方面に向かってどんどん歩く。あらかじめ地図を用意しておいたので迷うことはなかったけれど、思ったより北青山は遠かった……。
 MAYA2は、地下鉄外苑前駅のすぐ近くにあった。路地に入った割と静かな場所で、表にはMAYAの2ではなく1(?)らしいギャラリーが出ていた。
 MAYA2はその真裏だと看板があって、それに従って裏に回ってみると、小さなマンションの出入り口に地階を指す案内板が出ていた。外からは普通のマンションの一室にしか見えなくて、やや躊躇しながらドアを開けてみると、16畳ほどのこじんまりとした空間に10枚の絵が掛けられていた。
 10枚だとすぐ分かったのは、今回の企画展示のテーマが、80年代の10枚のレコードジャケットを10人のイラストレーターと幻冬舎のデザイン室長の平川彰さんがリメイクする、というものだったからだ。
 それぞれ原画とデザインされたジャケット、元のジャケットも含めたレコードの説明が展示されていて、はっきり言って僕にはまったく未知の音楽のレコードだったけれど(汗)、ジャケットデザインを見るだけでもとても楽しかった。
 イラストレーターの方から、会場にちょうどQUEENの曲が掛かっているのだと教えてもらった。「フラッシュ・ゴードン」というSF映画の音楽で、確かに宇宙っぽいサウンドが随所に混じっていた。
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%B3

 なんというかこの映画も凄そうだ……。

 村松葉子さんはTHE CUREのTHE TOPというアルバムを担当されたそうだ。ジャケット画は、蝶の羽を生やした妖精(?)の絵だった。背景に曲と関連した小物が描き込まれているらしくて、ジャケットのデザインでは曲名リストのアイコンに使われていたりした。
「The Caterpillar」という曲がちょっと気になって、YouTubeで探したらあったのでURLを載せる。これは見てしまったら忘れられないかもしれない……。(※微妙に昆虫系です)なんだか中毒性がある……。

http://www.youtube.com/watch?v=vBX8j1lZshE

 他にもたくさんのジャケット画が展示されていて、音楽が少しも分からない僕にもとても面白かった。レコードも聴いてみたくなる。

 この後、また電車に乗って吉祥寺に戻り、あるバンド(黒赤ちゃん以外)のライブに参加したのだった。

nojico & the clappin' birds Presents 「*fever nova*」

 それから、nojico & the clappin' birdsというバンドのライブを聴きに吉祥寺へ向かった。

 場所は吉祥寺STAR PINE'S CAFEだ。ここは黒赤ちゃんがメジャーデビューした時のライブ会場でもあったなあ、とふと思い出す。2階席もあるかなり大きいライブハウスだ。
 会場に向かう途中で、その黒赤ちゃんの松野さんにばったり出くわす。皆さんの日記によく「吉祥寺で未知を歩いていたら○○さんに会いました!」とか「●●さんが路上ライブしてました!」というのを見かけるけど、あれって本当にあることなんだな、と変な感慨に陥る。吉祥寺では石を投げればアーティストに当たるんだな、凄いなあ、と。
 話を聞いたら単純なことで、松野さんもこれからnojicoさんのライブを聴きに行くのだという事だった。それで、まだ出番までだいぶ時間があるからコーヒーでも飲んでこようと思う。一緒にゆこうか。
「ゆこう」
「ゆこう」
 そういうことになった。

 nojicoさんは、松野さんの同級生で、同じ軽音楽部の先生に教えてもらった兄弟弟子だそうだ。以前、その先生が率いる「野路裏」という実験的バンドのライブで一度だけ聴いたことがあるように思う。
 なんで僕がそのnojicoさんのライブに行くつもりになったのかと言うと、かなりややこしいのだけど、松野さんの弟子にあたるシスターさとみさんというコーラス担当の人が率いていた「Scissors」という高校生バンドのことをBlogで書いたことがあって(http://d.hatena.ne.jp/akatsuki_y/20090104 mixi日記未掲載)そのシスターさんが律儀にコメントをくれたりして調べてみるとシスターさんはnojicoバンドのメンバーでそれじゃあnojicoバンドはいかなる音楽を作っているのであるかと調べたらYouTubeにライブ映像が上がっていたりして、まあ言葉を尽くすよりライブ映像を見てみた方がよく分かると思う。

「アンダースタンドバイミー」http://www.youtube.com/watch?v=aM7kpJvzhtI
「スーパーマンhttp://www.youtube.com/watch?v=mP1LUqcQXxw
「LittleTowa」http://www.youtube.com/watch?v=S-T_zgJgm3M

(ほかにもあるよ!)

 む、これはかなり凄いのではないか? と繰り返し観ているうちにハマッてしまったのだった。

 それで、近くのスタバに入って松野さんから話を聞いてびっくりしたけれど、nojicoバンドは今回のライブの後に活動休止に入るという。今回が初参加の僕には初耳で愕然とした。いや今日聴くつもりになって良かった!
 時間近くになってライブ会場に入ると、既に人でいっぱいだった。一階席の隅では観客やスタッフが立ち寄って巨大でカラフルな絵をみんなで描いていた。「*fever nova*」(つまり熱新星?)という今回のイベントにちなんだ星々の絵だ。僕も少しだけ手伝うことになったりした。

 やがてnojico & the clappin' birdsの出番が始まった。YouTubeで繰り返し見たあの曲がついに実際に聴けるぜ! とかなり興奮した。僕だけじゃなくて、客席全体が高揚していた。理由はたぶん違うけど。
 松野さんが日記で書いていたことだけど、nojicoさんは学校の人気者で、太陽のようにまぶしい人だったという。
 まさにそのとおり、まぶしい音楽だった! 本当にまっすぐで、盛大で、火の鳥のように強くはばたく音楽だった。声に物凄く強い磁力がこもっている。
 黒赤ちゃんとは正反対のタイプのバンドだな、と思った。それぞれのボーカルを勤める松野さんとnojicoさんは、松野さんの言うとおり正反対の才能の人間なのだと思う。その二人が時空や音楽を共有しているのはなかなか凄いことだと思う。つまりヘッセの「知と愛」ではないか? そんな場に居合わせられた僕もかなり幸福だ。
 曲に打たれているうちに、時間がすぐ過ぎてしまって、一見さんの僕にはむしろ物足りない気がした。松野さんも「スーパーマン」が聴けなくて残念だったと言っていた。ああ、もっと早く観に来れば良かった……。
 とりあえずCDを聴きながら、nojicoさんの復活を心待ちにしようと思う。復活したら必ず聴きに行くので、どうかゆっくり休息してください……。

 雨が止んだ日は、まあそんな一日だった。