青空文庫的思いつき
先日行われた森岡書店の朗読会で、久坂葉子の詩に触れた。
で、久坂葉子の作品がいま書籍で読めるかどうかAmazonで探してみたのだけど……
「幾度目かの最期」 3点在庫あり。ご注文はお早めに。
「久坂葉子詩集」 中古商品1点¥ 9,999より
「新編久坂葉子作品集」 中古商品3点¥ 4,999より
……といった感じだった。在庫があるだけマシだが、普通の人はなかなか入手しづらそうだ。
そういえば久坂葉子は戦前の生まれで、戦後早く亡くなっている。つまり作品の著作権はもう切れていた。ということは、青空文庫に入っているかもしれないなあ……と思って探してみたら、あった。さすがは青空文庫だ。
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1052.html
「青空文庫」について、まだ知らない人がいるかもしれない。
青空文庫は、著作権の切れた作家(漱石や鴎外といった古典など)を、独自にテキストファイルの形に落としてインターネットで公開している、電子図書館の団体だ。誰でも自由に読むことができる。青空文庫のテキストを利用した電子書籍ソフトも確かDSなどで出ている。
昔の文芸作品はテキストファイルになんてなっていないし、本をテキストにするにはそれなりの手間が掛かる。それを自主的に無償で行ってくれているボランティア集団が「青空文庫」なのだ。こういう団体を知ると人間捨てたもんじゃないなと思う。
ちなみに、海外にも同じような団体があって、こちらは「Project Gutenberg」と呼ばれている。やはり版権の切れた作品を無償で公開している。
で、青空文庫のWebサイトに行けば本の内容は無料で読める。しかし、いかんせんテキストファイルなので、コンピュータの画面で読むことになる。これがなかなか辛い。紙に印刷すれば良いのだけれど、読みやすく印刷するのは手間も掛かるし、インクも紙も掛かる。「読む」という行為には、やっぱり出版された本が一番適しているのだ。
では、青空文庫のテキストを本にするというようなサービスはあるのだろうか……と思って探してみたけれどない。当たり前の話で、テキストファイルを本にするにはそれなりに手間&お金が掛かって、それなら普通に岩波文庫あたりを買えば済むのだった。わざわざ自分で印刷屋を煩わす必要なんてない。
しかし……青空文庫がある今なら、公開されているテキストファイルから自分の本を作ること自体は勝手にできる。そもそも版権が存在しないテキストなので、自分で勝手に文庫のレーベルを立ち上げて出版して売っても良いわけだ。(倫理的感情的な立場から、青空文庫に対する何がしかの貢献を伴うことになるだろうけど)
今ちょっと調べてみたけど、ダイソーの百円文庫がそうだったらしい。
「人間失格」の表紙をデスノートにしただけでバカ売れするのだから、中身を青空文庫からもらってきて装丁や表紙に凝るような商売があっても良い気がする。非常に凝った装丁の本なら、1冊5千円とか1万円でも、いやもっと高くても売れるだろう。
それも、1万部や2万部を売るのを志すのではなくて、マイミクのRuchiさんがやっているような手作りの製本で、オーダーメイドのように作るのはどうだろう。表紙はもちろん、文字の組み方やサイズや、紙の種類や綴じ方も選べるようにするとか。
自分だけの「こころ」や「檸檬」や「走れメロス」があったりするととても嬉しい気がする。もちろん自分のためだけではなくて、贈答品としても喜ばれるだろう。
製本を個人レベルで行っている人はいるみたいだけれど、まだサービスとしてやっている所はないみたいだ。誰か始めてくれないかな。自分だけの「明暗」とか作ってもらいたい。
朗読会の感想は近日中にアップします。岡安さんのテキスト選びのセンスは凄すぎる……。