三つの判断

 山田正紀の「神狩り」という小説を一日で読んだ。先生が好きそうな小説だと思った。《神》が記した未知の言語を、様々な妨害を乗り越えつつ解読していくという話だ。緊張感に満ちたサスペンスであり、登場人物が謎に肉薄していく姿には胸を揺さぶられる。

 今日は先生の一周忌だ。


 この一年間、僕は無駄に喚き散らし、色々恥を掻き、各方面に迷惑を掛け、そして病気になったりした。振り返ってみれば、去年はそういう年だったのだ。
 そんなわけで僕は様々な過ちを犯したけれど、それでも、過誤の前に行なった幾つかの判断については、間違っていないと今でも思っている。

 まず、組織の中にいて、それだけで安心していたらダメだということ。

 次に、小説というものはけっきょく独りで書くものだということ。
 逆説的だけど、他人のアドバイスを生かすためには、独力で書く力が必要なのだと思う。独りで書けなければ何人寄ってたかっても無理だ。独力で書けるだけの確信がどうしても必要になる。

 最後に、先生はあからさまに失敗してしまったのだ、ということ。
 先生が失敗してしまったのだからこそ、残された僕たちがそれを償わなければならない、ということ。

 今年は、これら三つの判断を独りで確かめていく年にしようと思う。

 合掌。

神狩り (ハヤカワ文庫 JA (88))

神狩り (ハヤカワ文庫 JA (88))