もうやめよう

もうやめよう
人に甘えるの
もうやめよう
愛されたいと思うこと
もうやめよう
報われたいと願うこと
もうやめよう
認めて欲しいと
人前で小さく呟くの
もうやめよう
お節介を焼いて
人に好かれようとするの
もうやめよう
役に立てば愛される
という思い込み
もうやめよう
誰かが思ったとおりでないときに
裏切られたと感じるの
もうやめよう
愛するのにも資格が要るという
現実から目を逸らしているの
もうやめよう
落ちた小銭を見るように
他人がこぼした嫌悪を目で追うの
もうやめよう
誰も喜ばない本当のこと
胸の奥から引きずり出すの
もうやめよう
片思い
もうやめよう
自己憐憫
もうやめよう


何もかもをもうやめて
そうして 世間と自分を繋ぐ鎖を断ち切って
漕ぎ出す海はサルガッソー
今まで多くの船が潮に流され
どうしようもなくさまよいこんで
幽霊船となって出てきた場所だ
陸(おか)の連中が目をそむけ
声をひそめる闇の領域 未知の海域
だからこそ僕は行かねばならない
あの静かな暗い渦のまんなかへ
何も起こらない粘つく海の中心へ
僕は行かねばならない
誰も知らない向こうの岸へ着くために
そして 闇を光とするために