「フラウア・チルドレンII」感想

 前に日記で書いたホンマアキコさんの「フラウア・チルドレンII」に行ってきた。台風が来た日に、台風が去っていった後に訪れた。


 麻布十番は思ったよりもこぢんまりとした街だった。そういえば赤坂で新聞屋をしていた頃に散歩で来たことがあったなあ、とふと思い出す。

 会場のカフェ・バーである縁縁は、大きな寺院の並ぶ坂道から路地に入った所にあった。店のドアは開け放たれていた。中に入ると、天井の高い割と開放的な空間だった。ホンマさんの作品が壁に並んでいるのがまず目についた。大きな流木(?)が何本か壁に掛かっていて、その上に絵が飾られている。奥のキッチンの上には大きなスクリーンが広げられ、映画「エコール」の映像が流れていた。

 席に着くと、美青年の店員が火を灯したキャンドルを置いてくれた。席のすぐ近くには本棚があって、色々な本が乱雑に入っている。まるで誰かの家にお邪魔している気分になる。雑貨やアート作品の販売スペースもあったりして、雑多な雰囲気がある。「イルカッフェ」と共通する空気があるなあ、と思った。

 夕食をまだ済ませていなかったので、「ガパオごはん」というフードメニューを頼んでみた。ひき肉や卵や野菜が乗っているご飯だった。一口食べるとドクダミ臭がする。これは、矢澤さん(黒赤ちゃんのベーシスト)がこの前熱く語っていたパクチーコリアンダー)ではないか!
「普通のカレーでも、パクチーを入れることによって、臭くなる」
 と矢澤さんに力説され、
「え、臭くなるだけなんですか?」
 香ばしくなるとか風味が引き立つとかないんですか? とウケてしまったのを思い出す。実際、臭くなるだけのような気がする。

 ホンマさんの作品に話を戻す。

 今回は、前回イルカッフェで行なわれた「フラウア・チルドレン」の続編という形らしい。花の子供達に新しい兄弟姉妹ができたようだ。ねじれた黒い茎の先に開く花の絵が、たくさん壁に飾られている。どれもとてもシンプルで小ぶりな花の絵だ。だけれど、それぞれの黒い茎のねじれと花弁の表情が、何かを語りかけている気がする。花がなんだか仮面のようで、その向こう側に顔が潜んでいる感じを受ける。

 ホンマさんは今回、立体作品や小物にも力を入れているようだった。天井には繭のような丸いランプシェードが下がっている。透明な羽がシェードを取り巻いていて、ごく薄い羽毛をまとっているように見えた。トイレの中にも、びっくりするようなオブジェが飾られている。ホンマさんはいつもトイレの演出に凝るみたいだ。

 食後にチャイを飲みながら下手な字で感想をしたためて、柿の種ボックスに入れて店を出た。道路標識に「溜池」の文字が出ていて、どうせだから溜池山王まで歩こうと思った。

 坂道を歩いているうちに溜池山王に着いて、主の変わった首相官邸を眺めながら銀座線の駅に入り、帰った。


 来週の9/9(水曜日)にまた訪れるつもり。
 今回の会場はこちら

ギャラリーカフェバー縁縁[enyen]:麻布十番