カラスも歩けば古本屋に巡り合う

 吉祥寺をなんとなくブラブラしていたら(定期圏内なので気軽に行けるのだ)、「サンカク」という古本屋を見つけた。
 表通りには白い看板だけが立っている。その看板の矢印が、建物と建物の間にある狭い路地を指していた。ノラ猫が通りそうなじめじめした裏路地で、奥に古ぼけた平屋の軒先と、本棚らしきものが見えた。一度はスルーしたけれど、なんとなく気になって、引き返して裏路地に入ってみる。
 ボロ家をまるごと古本屋にしたような店だった。玄関から中に上がると、カウンターと本棚、そして異様に低い天井で息がつまりそうだった。それほど背の高くない僕ですら、奥のほうでは頭がつかえて立っていられない。
 しかし、蔵書は凄そうだった。岩波文庫がずらり。ちくま文庫がずらり。他にもシュルレアリスム関連の大著や近現代の国文学の名作が単行本でたくさんあったりした。渋い品揃えだ……。現代詩読本で瀧口修造の巻があり、千円だったので買ってしまう。
 なんとも不思議な古本屋だった。これからたまに覗いてみようと思う。



 さて、靴も磨いたし詩も書いたし小説も進めたし、もううだうだせずにやるべきことをやろう。